以前『九龍城を見たかった人たちへ贈る〜「香港ルーフトップ」がすばらしすぎる!〜』という記事を書いた。「香港ルーフトップ」というすばらしい本の紹介だ。ぼくはこの本の解説を書かせてもらった。オビの文句もぼくが考えたのだが、それが「九龍城を見たかった人たちへ贈る」だ。

ぼくが学生の頃、九龍城が取り壊されるというので関連書籍があいついで出版された。ぼくも買った。一度本物を見に行きたいと思っていたが、かなわなかった。解説の出だしは以下だ
1996年、大学生だったぼくは中国返還直前の香港へ行った。後に映像作家になる同じ研究室の友人・真島理一郎くんと重慶大厦(チョンキンマンション)に泊まった。バックパッカー達に有名な、小さなゲストハウスが雑居する巨大なビルだ。2008年の大規模改装でだいぶきれいになったようだが、当時はどこか怪しげな雰囲気があった。ついに九龍城を見ることができず悔しい思いをしたぼくらは、まだ残っているごちゃごちゃとした香港を味わおうとここを宿泊先に決めたのだった。

名前だけで選んだ「TOKYO GUEST HOUSE」の一室は、かろうじてひとりが寝ることができるぐらいの大きさのシングルベッドが置かれた3畳ほどの部屋で、そこに2人で泊まった。トイレに入ると、便器のすぐ上にシャワーヘッドが据え付けられていた。複数のビルが一体となり迷路のようになっている館内をくまなく探検したところ、中央に吹き抜けのようになっているスペースを見つけた。喜び勇んで窓からそこへ這い出ると、上から次々と汚物が降ってきた。夜にはボヤがあった。

香港に滞在した日々のうち丸一日を、当時まだ存在した啓徳国際空港そばの小さな街ですごした。ひっきりなしに離発着する航空機で街は常に轟音に満たされ会話もままならないほど。雑居ビルの屋上へよじ登り、着陸態勢をとってタイヤを出した機体が手の届きそうなぐらい低く飛ぶ姿をフィルムに収めたものである。

当時空間デザインを学んでいたぼくらは、なにかっていうと九龍城を元にしたごちゃごちゃなスケッチを描いたものだ。黒歴史だ。

この「九龍城的猥雑さ」に対する好みはいまでも健在で、どうしてもそういうものに惹かれてしまう。

で、そんな趣味の持ち主にはたまらない空間が川崎にあるというではないか。その名も「電脳九龍城」。

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↑外観。もともとコジマ電気だった建物をみごとにウェザリング。

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↑入り口

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↑初めて行くと、けっこうどきどきするよ。

これは「ウェアハウス川崎」というゲームセンターだ。場所はここ。検索すると行ってみた人のレポートがけっこうあるので、それらを見て知っている方も多いだろう。ぼくもそうだった。いままで行かなかったのは、作り物だとわかっていたから。九龍城にかなわぬ片思いをした人間として、このいわば「九龍城テーマパーク」を認めてしまったらだめだろう、と思っていたのだ。めんどくせえなーと自分でも思う。

しかし、いざ行ってみたら楽しかった。負けた。これはすてきだ。

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↑入るとそこはこんな。え、ゲームセンターじゃないの?ってなる

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↑奥に進むも、こんな。ゲームはどうした。いやすごく楽しいからいいけど!

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↑入り口振り返ると窓があって、覗くと…

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↑こんな!

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↑奥まで行くとこんなになってて

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↑こんなところに行き着く!なんだこれ!

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↑たのしい。

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↑この先は、駐車場。このドアの開閉も雰囲気あった。

くやしいけど、これは楽しい。すごくよくできてる!入り口の1階はこのように演出だけで、2階から上がゲームセンター。この2階の吹き抜けがハイライト!これがほんとうにすごくよくできているので、みなさんゲームがてら見に行ってみてほしい。すばらしい。

特にこの2階の作り込みがすばらしくて、調べたらこれを手がけた株式会社 星野組のサイトがあった。香港からゴミを郵送したそうだ。すごい。

つくりものだからなあ、と敬遠していたのはまちがいだった。でもやっぱりもやもやは残る。しかし一方で称揚しがちな「本物」ってなんだろうとも思う。確かなのは「本気の作り物はすごい」ってことだ。みなさん、ぜひ見に行ってみて!