今年も執り行いました「地上絵描き初め」。馬込に干支である馬の絵を。



募集したところ集まってくれたもの好きな方々。集合場所の西馬込駅に40名。回を追うごとに増えていっております。

「地上絵描き初め」とは、GPS地上絵の描き初め版。GPS地上絵とはなにかというとGPSロガーを持って、あらかじめ「設計」されたルートに従っててくてく歩くと、そのデータが絵になる、という遊び。本気のロガーは高いけど"RunKeeper"などのログが取れるアプリがあり、以前に比べて多くの人と楽しめるようになりました。いい時代になった。

当「熱中ブログ」でも、これまで成増にタイヤキの絵を描いたり大阪で子ゾウを描いたりした様子をレポートしてきました。これまで描いたものたちはこちらにまとめてあります。

年明けにその年の干支を描く「地上絵描き初め」は今年で4回目。2011年は本郷にウサギを、2012年辰年には目黒にタツノオトシゴを、そして昨年は蛇崩れにヘビを描きました。

そして今回は馬。それが冒頭の絵です。まずはとにかくその成果をご覧いただきましょう。


GPSロガーで記録したデータをGoogle earth上で再生したもの。「地上絵」と言っても当然現地にはなにも残っていなくて、ただぼくらがこのように歩いた、というだけなんだけど、何回やっても毎回感動する。なんでしょうね、この感動。


■GPS地上絵のむずかしさ

さて、この「馬込馬」は新作ではなくて、実は2010年に描いています(描いた時の様子→「全長2.5kmの馬の絵を描く」)。新年に迎えるにあたって、新しく設計した馬をどこかの街に見出したかったのだけど、この馬込馬のクオリティを越えるものをどうしてもつくることができなかった。無念。前出リンク先の記事のあちこちに書いてますけど、地図の中に絵を見つける「設計」ってすごくたいへんなんですよー。

しかもこれを設計したのはぼくではなく、ぼくが地上絵をやるようになったきっかけをくれたいわば「師匠」である石川初さん(前出記事群にたびたび登場しています)。ぼくもいつかこれぐらいすばらしい馬を描いてみたい。12年後に期待!今回は家元の彼も参加しての描き初めとなりました。

本来のGPS地上絵は一筆書きすることにある。つまり、全コースをぐるっと描ききる。散歩とも違うシビアさ(コースから離れてはいけないので面白そうなものが見えてもそちらに行くことは出来ない!)で何キロも歩いた結果、スタート地点に戻ってくる、という達成感があるんだかないんだか、というのが醍醐味なのだ。

しかしこの馬込馬、全行程を回るのはたいへん。なぜならこのあたり、けっこうな坂道地帯なのだ(後述)。なので、以下のように3チームに分けた。「目組」「鼻組」「お腹組」だ。


大きな地図で表示

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↑集まった面々が3チームに分かれ(「お腹がいい人ー?」って無茶な質問をして分けた)て出発。


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↑ぼくは「目組」(上の地図で赤いラインのコース)だった。このチームだけスタート地点が一駅隣。チーム分けする際に悩むのは、各チームの出発地点とゴール地点がめんどくさくならないように(住宅街のど真ん中でスタート、とかになると移動がたいへんなので)かつそれぞれがだいたい歩く距離が同じになるようにコースを分けること。

各チームあらかじめプリントアウトした地図を見ながら、はじめて歩くなんてことない住宅街をうろうろと、時には同じ場所を行ったり来たりして馬を描いていきます。どこか目的地があって、そこに移動するわけでもなく、いわゆる散歩とも違う。この奇妙な移動はGPS地上絵ならでは。

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↑これは股の部分。ここまで来て、同じ道を引き返す。十数人が住宅街の中をぞろぞろと、こういう怪しげな行動をするわけです。

あとどんなに設計時にがんばっても避けられないのが「道路渡れない」問題。これがなかなかやっかい。


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↑「目組」の右足蹄が国道1号を跨いでいるんだけど…



設計図のこの部分(大きな地図で表示)↑


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↑横断歩道もなく、車通りも多く、中央分離帯も充実していて渡れない。


こういう箇所が必ずある。逆に言うと、ぼくらは日頃いかに「歩いていいとされている場所しか歩いていないか」がよく分かる。「絵を描くため」といったまったく別の論理で移動する必要に駆られてみて、はじめて道路の制度ってけっこう融通が利かないものだと気づかされる。これも地上絵の醍醐味だ。

しょうがないので、引き返して迂回して反対側でもまた引き返す、という動きをするわけですが…


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↑さきほどの写真で中央分離帯の向こうに見えていた階段。下までおりてそして引き返す。


ところが、これも毎回苦労するところなんですが、GPSロガーには測位誤差がつきものでして、結果があまり思わしくありませんでした。

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↑こちらが実際描いたログ。もっと1号線のきわっきわまで行って、すこしそこに佇むべきだった。

「GPSロガー投げたら向こう側まで届かなかったかな?」という会話がなされたほどでした。


■地形が馬を導く

ほかにもいろいろ楽しいことと苦労とがあるのですが、書き出すと長くなるので割愛。ぜひみなさん参加してもらって実感していただきたい。

で、最初に言った「坂が多い」という話。ぼくがいた「目組」もけっこうアップダウンをしたんだけど、「お腹組」(地図では緑色のコース)はさらにすごかったようです。


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それもそのはず。この馬込馬、実は東京でも有数の「スリバチ地帯」(後述)にいらっしゃるのでした。



↑ほら!ちょうどギザギザと地形が複雑になってるエリアにいる!(「東京地形地図」をGoogle earthで表示したものにログを乗せてキャプチャ)

これらかつて川が削った谷を何回も横断して絵を描いたわけで、そりゃあ坂ばかりなわけだ。このようなまわりを台地に囲まれた魅力的な窪んだ場所をその形状から「スリバチ」と呼ぶんですが、この呼称と楽しみ方の提唱者がその名も「東京スリバチ学会」。「東京「スリバチ」地形散歩」という本も出てます。これがとても好評で先頃2冊目が出版されました。その表紙が、なんとこの馬込馬がいるこの場所!

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↑「東京「スリバチ」地形散歩2」の表紙。ほら!(上の馬の乗った地形図は北が左下になってるので、この表紙とは向きが180度ほど違います)

ちなみにこのスリバチ学会の副会長はほかならぬ石川さんでありまして。そしてぼくもこの2冊目に寄稿しています。タイトルは「地形がぼくに絵を描かせる」。

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↑ぼくが寄稿したページ。そう、GPS地上絵と地形について書いているのです!


なんだか急に本の宣伝みたいになってきましたが、これ偶然。「そういえばここの地形ってあの本の表紙じゃない?!」ってさっき気がついた。ほんとだって。

東京の地形って大阪にくらべるととても複雑で、道の形もその影響でぐちゃぐちゃ。だけどこのぐちゃぐちゃの曲線が地上絵を設計するときの手がかりになるのだ。逆に大阪中心部は道がきれいに碁盤の目なので絵が描けない(だから大阪の子ゾウは苦労した。あと同じ理由で銀座に子犬描いたときもかなり悩んだ)。

目黒にタツノオトシゴを設計したときには、目黒通りの曲線がタツノオトシゴのお腹に見えたのがきっかけだった。かならず道の一部が動物の一部に見える瞬間があって、そこからするするっと描けるのだ。石川さんに、今回の馬込馬の場合、なにが最初の手がかりだったのか聞いたところ、それは「頭」だったそうだ。


■馬の額の謎

で、その頭の部分を見ると奇妙なスリバチがあることに気がつく。

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↑ちょうど額のところにやけにきれいに正方形の窪みがあるのがおわかりいただけるだろうか。

これ、現地行くと分かるんですが(まわりはけっこうなお屋敷街)、がくっと不自然に窪んでます。ここどうなってるのかというと

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↑テニスコート(さっきの航空写真と向きが違いますが、この状態で北が上。前述のようにさっきのは馬がちゃんと見えるようにぐるっと回転させてます)。

窪んだ土地だから住宅に出来なかったのかな?と思ったんですが、これ古い地図見るとびっくりでして!

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↑なんと射撃場!(テキサス州立大学にある米軍が測量した日本主要都市の地図"Japan City Plans / U.S. Army Map Service, 1945-1946"より)

日本帝国小銃射的協會の跡地だそうです。弾がまわりに飛んで行ってしまわないように、地形を利用して窪地の下に作ったわけですね。なるほど。それがテニスコートに、というのは面白い。つまり今も昔もタマを打っているわけです。

おあとがよろしいようで。
 
 
■またやりますよ

…と、話が脱線しましたが、GPS地上絵の楽しさが何となくでも伝わったのなら嬉しい限り。またやりますので興味がある方はぜひご参加を!ぼくのブログで告知しますので、チェックしてみてください。

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↑「目組」ゴールの様子。なんの変哲もない住宅街の一角で「ゴール!やったー!」って喜ぶ人たち。「こんなところでなにやってるんだ?」といぶかしげなご近所の方。こういうなんてことないところが特別な場所になっちゃうのもGPS地上絵の面白さなのだ。