■念願の「ビルマニアカフェ」さんと

ぼくは以前から高度経済成長期に建てられた、なんてことないビルが気になっている。たとえばこんなの↓

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↑ものすごくかわいくない?!(大きな画像はこちら

見つけ次第写真を撮っていたら、けっこう集まった↓

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↑もうなくなっているものもあるんだろうなー(ひとつひとつじっくり見てみたい方はこちら
連載しているデイリーポータルZでもこういうちょっと古いかわいいビル(デッドストックなビル、ということで「デビル」と呼んだりしている)を見て回っていくつか記事を書いたこともある。

_SS400_地味な記事なのでそれほど話題にならなかったが、一部に熱心な「かわいいビルファン」がいらっしゃるようで「じつは私もなんです!誰も理解してくれないけど!」というメッセージをけっこういただいた。一匹いると十匹はいる、ってやつだ。

で、そうなると当然ぼくなんかより熱心に観察されている方がいらっしゃるわけで、その最右翼が「ビルマニアカフェ」のみなさんだ。大阪を拠点にすばらしい活動をなさっている。左は先頃彼らによって出版されたその名も「いいビルの写真集 WEST」という本。これがほんとうにキュートなので興味ある方はぜひ手にとって頂きたい!お勧めです!売れてるらしいです!うらやましいです!

関西ではさまざまなイベントを催しているビルマニアカフェのみなさんですが、先日東京に来てシークレットな会合を開くという情報をいただいたので、話を聞きに行きました。


■日本でいちばんビル好きが集まっている場所

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↑某日、某会場に集まったビルファン。いまここがテロの対象になったら、日本の「かわいいビル界」は失われた十年に突入するだろう。

「いいビルの写真集 WEST」はもちろん買ったし、その活動をかねてからうらやましいと思っていたぼく。ちょっと緊張して会場へ向かった。そこはとあるビルのとある会議室。今回の催しはイベントではなく、東西名の知れたビル好きが情報交換と交流を深めるためのものだったので、このような会場となったようだ。しかしこれが、ものすごくおもしろかったので、いつか東京カルチャーカルチャーあたりで、イベントとして見てみたい。

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↑いよいよビルマニアカフェメンバーの方のプレゼンテーションがはじまって、もう初っぱな1枚目からこのキュートさ!

もう、うっとりの連続ですよ。一同「あ〜」「ほぅー」「はぁ〜」って溜め息ばかり。上の写真のビル(ちょっと見えづらくて恐縮です)はなんといってもこの階段室部分がすばらしい。参加者からは「この時代のビルは階段が偉いよね」というコメントが。階段が偉い。けだし名言である。

ビルマニアカフェのメンバーであり、建築士でもある高岡伸一さん(twitter:@shinichitakaoka)からは「1967年に建築基準法に『竪穴区画』を設ける規制が加えられるまえまではこういう階段が偉いビルはたくさんありましたねー」とのコメント。なるほどー!(階段室が防火区画として仕切られていないと、火災の熱がかんたんに上の階に伝わって延焼しやすくなってしまう)

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↑「階段室いいよねー」と盛りあがった

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↑木製のこの階段手すり、ターン部分のこの丁寧な作り!4つの部材でターン!手間暇すてきだ。

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↑「階段は裏側です!」っていう名言。

そう、ビルマニアカフェのみなさんがすばらしいのは、漫然とファサードの写真撮ってるぼくなんかと違って「いいビル」がどのように「いい」のか、を法律や設計した建築家、歴史などから分かりやすく解説する点にある。ほんとすばらしい。

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↑うわ!このビルもすてきだ!

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↑ビル好きならずとも注目したことがあるはず。大名古屋ビルヂングのレポートも。これは関東を代表するビル好きブログ「ビルヂング研究(秋葉OLの楽しみ探し)」さんによる発表。建て替えはじまっちゃったのでざんねん。


■「古いビルには長老がいる」

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↑大阪のトンチビルの雄「味園ビル」内「ユニバース」の取材も!味園ビルではぼくもイベントやったことがあるんだけど、あのビルはほんとにすごい!

ぼくが不思議に思っていたのは、なぜビルマニアカフェのような集団が大阪に生まれたのか、ということ。いや、べつに東京じゃないと、ってわけじゃなくて。実は団地好きにおいても、関西の方々っていち早く結束して精力的にイベント行ってて、ぼくの印象としては大阪って東京と違ってちゃんといち勢力として存在感をアピールする傾向があるなあ、というのがありまして。ビルでもそうなのか!って思ったのだ。

その理由が今回ちょっと分かった気がした。それは上の写真の味園ビルのレポートのほか、大阪のいいビルのオーナーにインタビューしたレポートをきいてだ。というか、まずもってビルオーナーにインタビューしてる、っていうのがすばらしすぎるんだけど。

彼らが愛してやまないあるいいビルのオーナーさんは「ビルを守るためにタバコも酒も止めた」という。上の写真の味園ビルもビル自体はもとより内装から設備、その材料調達に至るまですべて自前で製作してきたという話だ。

つまり「ビルを持つことは自分の国を作ることに等しい」ぐらいの心意気をもつオーナーさんが大阪には多いのではないか(東京都比べたことないからてきとうですが)。そういう大阪人の心意気みたいなものと、ビルマニアカフェの方々の熱心さは似ているのではないか、と得心したわけです。


■東京にもあるよ!

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↑建築家上野タケシさんによるコープオリンピアのレポート。これこれ!

さて、どうも大阪勢に一日の長あるビル界ですが、東京にも心強いビル好きがいます。今回いいビル界の東の横綱、あのコープオリンピアのレポートをした建築家上野タケシさん。なんと事務所がこのすばらしいビルの中にあると!うらやましい。

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↑これがコープオリンピアの廊下。緋毛氈が敷き詰められててかっこいい

原宿の駅から表参道へ向かうところにある、みんな目にしたことがあるはずあのビルだ。あのギザギザのかっこいいやつ。
東京コーポの社長の故・宮田慶三郎氏がアトランタで滞在した宿泊先で感銘を受けて、ホテルとアパートを合体させた「アパーホテル」を目指してたてました。(上野さんの「uenoブログ」より)

とあるように、たんなるマンションとは異なる風格を湛えております。外見もすてきだが内部もまたキュート。実はぼくも中に入ったことがある(以下その時の写真)。なんせこの住宅、ゲストルームがあって申し込めば宿泊できるのだ!

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↑ホテルのフロントのようなエントランス

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↑ロビーもこんな。奥に建築模型がある。プライドを感じる。

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↑廊下。かっこいい!

みんなも一度泊まってみるべき。

で、今回上野さんのレポートではじめて知ったのは、なんとこのコープオリンピアの屋上にはプールがあること!これがまたすてきなのだ。

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↑うわあ!なにこれすてき!

残念ながら今は機能していないそうですが。いやー、ここはいちど上がってみたい。

このコープオリンピア、上野さんによれば、建設当初に入居者で作った親睦団体が、管理していた分譲会社の運営方法に疑問を持ち、それを表明したところ分譲会社が管理権を放棄したので、以降自主管理しているという。住民の方々のプライドが感じられるなあ。


■ネーミング募集!

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↑さいごに高岡伸一さんによるプレゼンテーション。「いいビル」をもっと多くの人に認知してもらおう!という発表。そうだよねえ、もっとみんな愛でるといいよ

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↑ふつうこれが「あらまほしき並んだ建物の風景」とされてるけど

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↑これも同じようにすてきじゃない?と。まったくだ。

実に楽しく有意義な会合だった。やっぱりいいよねえ、ビル。しかし終了後、高岡伸一さんとお話ししたのは「こういうビルの良さを普通の人に説明する言葉がまだまだ足らない」という共通の悩み。そうなのだ。つい「いいビル」とか「かわいいビル」とか「デビル」(←これは論外か)とか言っちゃうけど、これじゃあ説明不足でして。なんとかして一言で「ああ、なんとなくわかる」ってところまで持っていける言葉をみつけたい。

いい言葉思いついたら教えてください。あと、いずれ東京でもイベントをやってもらうよう取りはからいたいと思ってるので、実現のあかつきにはぜひご参加を!