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f6aa9eb8ぼくがさいきんすっかり熱中していることのひとつに「GPS地上絵」がある。

「GPS地上絵」とは何かというと、GPSロガーを持って、あらかじめ設計した通りに街をぐるぐる歩いて、その軌跡で絵を完成させる、という遊び。って、よく分からないよね。

まず左がGPSロガー。ぼくが愛用しているもの。小さくて軽いのが気に入っている。要するにこれはクルマについているナビが位置を割り出す仕組みと同じで、ナブスターという人工衛星とやりとりして緯度経度を記録するというもの。

ぼくは外出するときには必ず持ち歩いているのだが、3年ほどのぼくの外出記録はこのようになる↓

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このロガーに記録されたデータをGoogle Earthに読み込んで表示させるとこのようになる。いやこれが、へたな日記よりそのときのことを強烈に思い起こさせるんだよね。「記憶は場所に宿る」なんていうけれど、つまり、移動こそが思い出なのだな。

で、これを使って絵を描くのだ。とにかくまずは今回の「タイヤキ」の成果をご覧いただこう。

ロガーを持って、あらかじめ地図で設計したタイヤキの道筋の通りに歩いたログを早回しで再生したもの。どう?おもしろそうでしょ?おもしろいんだよー、これがほんとに。


■GPS地上絵仲間がいるのです

これまでにいくつかの「GPS地上絵」を描いてきたが、今回のタイヤキは中でもコンパクトでかわいらしい。いままでに描いたものは以下にレポートがあるので見てみてほしい。

タツノオトシゴ、ウサギなどをいろんな街に見いだして、設計し現地を歩き回って描いてきた。みんなで。そうなのだ、この趣味を持つ人はぼくだけではない。この遊び、そもそもは「GPS地上絵師」を名乗る石川初さんが教えてくれたもの。ぼくの師匠である。

で、GPS地上絵の輪は広がって、今回のタイヤキの設計はぼくではない。@yonmasさんの手によるものなのだ。


↑これが設計段階(大きな地図で表示

正直、これはくやしいぐらいすてき。なにしろこのコンパクトさ。いままでぼくが描いてきたのは道のりにして40kmほどになるのだが、今回のタイヤキは全長わずか700m。いちどでも地上絵を設計した人なら分かるのだが、小さく描くのってたいへんなんだよね。あっぱれ。

さて、タイヤキを描いた様子を見ていただこう。

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左・グリーンのジャケットの方が今回のタイヤキの設計者@yonmasさん。そして参加者を募ったら集まった共にタイヤキを描く仲間たち。舞台は成増。

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でなんと、今回はNHK「おはよう日本」の取材も同行(今気がついたけどこのときの取材は本サイト主である「ぷろぺら」の制作ではなかったんだけど…いいですよね、こうやって紹介しても?>ぷろぺら社長)

小高さん(ぷろぺら社長)は太っ腹だから大丈夫のはず!


■良い絵は地形に沿っている

GPS地上絵の楽しみの半分は、こうして地面を歩き回って絵を描く部分にあって、もう半分は設計にある。たぶん東京は地上絵向き。どういうことかというと、きれいに整っていない道筋が絵を「呼ぶ」のだ。碁盤の目の都市ではこうはいかない。


大きな地図で表示

「呼ぶ」とはどういうことかというと、地図をじっと見ていると絵が浮かび上がってくる瞬間がやってくる。ぼく自身の経験から言うと「ホンゴウサギ」↑の設計時にはお腹の曲線が「呼んだ」。不忍通りがはねているウサギのお腹に見えた瞬間「描ける!」って思ったんだよね。耳がきっかけじゃないのが自分でも不思議。

同じようにタツノオトシゴもお腹が「呼んだ」。

大きな地図で表示
これも目黒通りの曲線がお腹に見えた瞬間「いける!」って直感した。なんだろう、お腹がポイントなのかなぼくにとって。お腹になにか因縁でも。

おもしろいのはどちらも地形図で見ると地形に沿った道なんだよね。不忍通りも目黒通りもそれぞれ川の跡の道。たぷんとした曲線は水の流れのそれなのだった!タツノオトシゴの場合、しっぽがガタガタに無理矢理描いてて、ちょっと不満が残るんだけど、それはこの設計の道筋が地形に沿ってないからなんだと思うのだ。良い絵は地形に素直。

で、今回のタイヤキがキュートなのは地形由来の道を手がかりにしているからだと思う。
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↑みごとに地形に素直!(東京地形地図をGoogle Earthで表示したもの)

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集合場所の成増駅前にあった地図の中にもタイヤキが見える。これはエレガントな設計だからだと思う。やるな!@yonmasめ!

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蛇行するかつての川の曲線がタイヤキの顔に見えてくる!

やはりな、と思ったのはこの成増の曲線、地形好きで有名な東京スリバチ学会が先日出した本『凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩』でも地形を楽しめる場所として大きく取り上げられている点だ。

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地形好きにはちょうお勧めの本『凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩』にも成増の章がある!

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そしてまさにタイヤキの顔の曲線は、かつてあって今は暗渠化されている百々向川(ずずめきがわ)であると解説されている!

■あんこがたっぷり、行ったり来たり

崖線がタイヤキの輪郭であるために、前出の地形図で見るようにあんこがたっぷり入ったものに仕上がっているのもおもしろい。

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↑タイヤキの「目」を描くためにいったん顔の輪郭から離れて菅原神社へ向かう。この通り魅力的な階段!

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↑登り切って振り返れば、百々向川と白子川が削った「スリバチ」が見下ろせる。

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↑これが「目」になる菅原神社。目がこのように神聖な場所というのも心憎い。

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↑で、神社をぐるりと回って(参拝して)また来た道を戻る。

そう、この「来た道を戻る」という動きはGPS地上絵の醍醐味なのだ。特に今回のタイヤキでは存分にこのアクションがあった。ヒレの部分だ。


↑この部分。魚介類ならでは(タイヤキだけど)(大きな地図で表示

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↑ログがずれないように一列に並んで行って戻る!

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↑行って戻る!おかしい。

tGPS地上絵をやると、こういう奇妙な動きをすることになる。で、気がつくのだ。ぼくらはふだん「A地点からB地点に向かうために」移動することばかりなのだ、と。絵を描く時の筆の先は、どこへ向かうのでもない。われわれは頭上はるか遠くの衛星に操られるように、好奇心と遊び心という墨がしみこんだ筆の先になるのだ。気分としてはこの絵のような感じだ。なんだこの絵。せっかく良いこと言ったのに台無しだ。


■寄り道できない

毎回たいへんなのは、トイレに行きたくなったりのどが渇いたりしても、コース上にないコンビニやお店
には入れない、ということだ。

今回はしっぽの部分にコンビニがあって(前出のムービーで、一時停止している場所)たすかった。そうそう、あと、人形焼き屋があったので、そこに寄ったのが楽しかった。

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↑良い雰囲気の店先。みんな安心して寄り道。

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↑人形焼き屋さんだった。ざんねんながらタイヤキは売っておらず。

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↑あんこたっぷりでおいしかった!


■アドリブも必要

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↑道がなくて困っている@yonmas氏。

地図上で上手く描けても、実際現地に行くと「道がない!」「塀がある!」なんてことはよくある。文字通り設計図は「机上のもの」なのだ。で、こういう事態に陥ったときに、現場でいかにエレガントなアドリブができるか、それもGPS地上絵の楽しさのひとつ。

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↑今回一番の困難は背びれの角のところ。行き止まりだったのだ!ムービーで鯛の「カマ」の部分を描いて引き返しているのはそのせい。



■現地には何も残っていないけど

さて、こんなぐあいに楽しく3時間弱。ぐるっと一筆書きを終えた。

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↑引き返した「カマ」の部分の、行き止まりの崖の下がゴール。見えてきた!

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↑ここがゴール。「やったー!」ってなったけど、なんとも地味な場所…とくに何もない場所で「ついたー!」って喜んでいる人を見かけたら、その人はGPS地上絵を描いている人かもしれない。

で、近くの喫茶店でさっそくデータを持ってきたパソコンに移して、表示させる。
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↑歓声を上げる一同。ほんと、この瞬間の得体の知れない達成感はふしぎ。なんせ現場には何も残っていなくて、ここに表示されたデータと自分たちの体験だけが成果なのだ。

うーん、何回か記事にしてるけど、やっぱりこの感動って説明難しいなあ。とにかくみなさんにもぜひ体験してほしい。ロガーなくても、最近はスマホのアプリに同じ機能のものがあるし、ログとらなくてもみんなで一筆書きでよく分からない移動をするだけで楽しいので、興味持った方は次回開催時にぜひご参加ください。ぼくのツイッター@sohsaiで告知します。

最後に地形図にログを乗せたムービーを見ていただこう。



【記事中の写真は参加してくれた@KOICHIROHが撮ったものを使いました。いつもありがとう>KOICHIROH】