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インターネットのすばらしさは「ひとりぼっちを救う」という機能にあると思う。

ぼくが工場を巡って写真を撮り始めたのは学生のとき。幸いデザイン系の学科に在籍していたため、同級生に「団地いいよね」「工場かっこいいいじゃん」と理解してくれる人はたくさんいた。しかしふうつのまっとうな学問をやっている人たちやお勤めの方々の場合、周囲に理解者がいる確率は相当低い。

ぼくが団地を撮影収集するサイトを始めたのは2000年。その後mixiの「工場萌え」コミュに出入りするようになって、とてもうれしかったのは「仲間がいてうれしいです!」とか「自分の趣味はへんなのかなあ、と思って今まで黙っていました」とか、そういう感想だ。

そうだ、われわれは物理的にはひとりぼっちなのだ。それをネットが救った。すばらしい。

こんにち、twitterやfacebookなどでさらにこういう特殊な趣味を持つ人々がつながりやすくはなっているが、実際に会うことは少ない。全国集めればそれなりに人口があることがわかった「工場萌え」な人たちだって、一人一人は点在しているのだ。

で、昨年2010年の年末に、年に一度ぐらいはそういう「ひとりぼっち」が集まるのもいいんじゃないか、と思って忘年会に名を借りた工場鑑賞ツアーを企画した。

名付けて「ドボ年会」。
工場やジャンクションなど「ドボク」なものに惹かれる人たちのための、忘年会だ。だじゃれだ。

これが実に楽しかった。大成功だった。全国から40名を超える方々が集まり、バスを借り切って四日市に集合した。その時の様子は→デイリーポータルZ「ドボ年会」をやってみた

で、今年。「今年はやらないんですかー?」のリクエストにお答えして「ドボ年会2011」をやってみたしだい。場所は、すてきな工業地域でここを忘れちゃこまる。北九州だ。

ちょっと遠いかな、と心配したのだが「ひとりぼっちパワー」はそんなことではくじけない。最終的には50名をこえる参加者が集まった。どうかしている。今回はその様子をご覧いただこう。

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今回もバスをチャーター。

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僭越ながらバスガイド役もやらせていただきます。


■海を臨む銀世界

北九州における珠玉の工場鑑賞スポットをめぐった今回のドボ年会。最初に向かったのが、石灰工場だ。しょっぱなから、みんな大興奮!

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一面の銀世界!

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構造物もすてき!【大きな画像は→こちら

この工場は、すぐそばの採石場で石灰石をとり、セメントなどの材料として最適な状態で出荷するというもの。もちろんふだんはこうやって中に入ることはできない。今回特別に許可をいただいてみんなで堪能することが出来たのだ。


ここの恒見石灰工業さん(大きな地図で見る

北九州もこのあたりは石灰の鉱山が多くて、航空写真でみても白が目立つ。きれい。

_DSC0112海を臨む真っ白な世界。なにか夢の中のよう。

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みんなどんどんいろんなところに登っちゃったりしてる。たのしそうだ。

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海の中にはかつて使っていたコンベアの一部が。すげー!

そう、ここ、海に面していた山から石灰石をどんどんとって行った結果できた敷地なんだそうだ。ここで掘り出された石灰が建物を形作っているんだよなあ、と思うとふしぎな気分になる。しかもさらに言えばその石灰の元は2億年前とかの海洋生物の体なのだ。すごいなー。

残念ながらこの採石場は近々操業停止するとのこと。目に焼き付けておこう。


■工事中のトンネルも入れてもらった!

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石灰工場だけではない。特別に入れてもらったのは、工事中のトンネルもなのだ!実は今回のこのツアーをコーディネートしてくださったのは「工場萌え議員」として有名な(有名、っていうかぼくがそう呼んでるんだけど)北九州市議の奥村直樹さんなのだ。奥村さんには以前にも工場を案内していただいたことがあり、今回もそのすばらしい采配ぶりにすべてをお任せし、ぼくはもっぱら大船に乗っていただけなのだ。いちおうぼくが主催なんだけど、ほとんど何もしていない。すまん。そしてありがとうございます!

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案内してくださった現場の方もきさくでとても楽しかった。

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途中、避難通路になる予定のスペースにも入らせてもらった。こういう工事中の狭い空間ってどきどきするー

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鉄骨とかどーんとむき出しだし!

このトンネルは新若戸道路という名前のもの。北九州市街を分断している洞海湾には現在橋がひとつ架かっているだけなので、交通が渋滞することもよくあってたいへん。で、このトンネルを作っている、というわけだ。(くわしくは→国土交通省 九州地方整備局 北九州港湾・空港整備事務所「 新若戸道路 事業概要」


■なにが「脱線」なのか

さてこの記事、タイトルを「脱線する人たち」としたんだけど、それはなぜか。

こういう、みんなでドボクなものを見に行くツアーをよくやるんだけど、いつもおもしろく思うのがみんな目をつけるところが全く異なる点。

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トンネル入ってそうそう、なにやら型枠に夢中の参加者。

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非常口に注目する方。

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てんでばらばらに愛でる!

「工場萌えの第一人者」なんて呼ばれることもあるぼくだけど、こうやってみんなの楽しみ方見てると自分の視野の狭さに気づかされるのですよ。いやほんと、みんなすばらしいよ。自由で。

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セメント工場がばっちり見える港に来たときも…(ここも奥村さんの力で特別に入ることができた!)

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このすてきな構造物群にうっとりするかたわら…

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みんな思い思いに魅力的なものを見つけて徘徊!

で、こういう状態が飽和状態に達すると、どういうことになるかというと、こういうことになる。

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ベタなポーズをとるぼく。なにを好きこのんでかそれを撮る人。

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なぜか工場そっちのけでお互いを撮り始める。

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しまいにはこんなことに…なにやってんだ…なにかのスポーツか。

ここ、冒頭のタイトル画像にある、最初の石灰工場のサイロの中なのだ。ここも普段は絶対入れない場所であり、非常な経験であるにもかかわらずなぜか参加者同士を撮り始める。これを「相打ち」という。

上の写真の「相打ち」の結果は以下だ。
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↑ぼくの視点

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↑相手の@xningen さんの視点。ピンクのへんな人が入っていなければとてもいい写真だと思うのだが。


■つまりぼくらは「マニア」じゃないのだ

「なにやってんだまったく…」と口では言っていたが、じつはこの「脱線」はすばらしいと思っている。いや、ぼくを撮るのがすばらしいんじゃなくて。

どういうことかというと、最初に書いたとおり、ぼくらは「ひとりぼっち」だった。それがこうして出会うことができた。重要なのはそのことであって、この集まりでストイックに構造物の写真を撮ることじゃない。

考えてみればぼくは工場について詳しいこと何一つ知らないし、今回参加してくれた方々も「マニア」じゃない。

そう、ぼくらはマニアじゃないのだ。マニアってすぐ「俺の方が知ってるぜ」「ぼくのほうがたくさんの場所に行ってるぜ」になるじゃないですか。ぼくはあれが苦手。たぶんその世界で存在感を示すためにそういう「知識合戦的コミュニケーション」が必要だったのだろうとは思う。つまり「ひとりぼっち」の解消手法だったのではないかと。

でもいまはちがう。「なんとなく惹かれる」「よくわかんないけどすてきだよねー」ぐらいのままを維持しつつ集まって楽しむことができる。そういうスタンスが行き着く先がこの「脱線」なのだと思っている。

…と、まあなんだかよくわかんないこと書いちゃったけど、すごく楽しかったので来年もまたやろうと思います。次はどこに行こうかな?

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夜まで工場めぐりは続きました。ま、なんだかんだでこうやって真剣に撮っちゃったりもするけどね。