bunsuiダム好きで有名な萩原さんが、先日デイリーポータルZに書いた記事がとても面白かった。「市街地で分水嶺を探す」というもの。武蔵村山に荒川の支流と多摩川の支流が接近して流れているところがあって、ということはそのあいだには分水嶺があるはずだ!行ってみよう!というもの。

そういえば、ぼくもいぜん目黒川と宇田川の「分水嶺」が渋谷の近くにあるはず!と思って見に行ったことがある。

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(「時層地図」より。このアプリはちょうおすすめ!)

目黒川に注ぐ小さな流れのひとつの水源が東大駒場キャンパスの中の池で、宇田川にそそぐひとつが松濤の公園の中の池。この間が分水嶺ってわけだ!と。

まあ、厳密に言ったら分水嶺じゃないんだろうけど、なにが言いたいかというと「分水嶺」っていう響きに誘われてこうやって地図を見て、街を徘徊するのはとても楽しい、ということ。

で、いぜん出演していた「熱中時間」という番組に「分水嶺熱中人」が登場したことを思い出した。日本を北から南まで分水嶺を追って旅する方だ。すてきだ!とエキサイトしたことを覚えている。

堀公俊さんというこの方、本職は「組織コンサルタント」だそうで(お名前で検索するとその方面の情報がまずヒットする)、またびっくり。

で、この方の本を読んでみた。その名も『日本の分水嶺―地図で旅する列島縦断6000キロ』。

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まずびっくりさせられるのが、日本では正式に分水嶺がどこか定められていない、という事実。

国土地理院が発行する地形図のどこを探しても分水嶺を示す記号なんか出てこない。もちろん書店や図書館に行っても、分水嶺について書かれた本はまず見つからないだろう。(中略)しかし不思議なことに、これがアメリカだとまったく事情がちがってくる。あちらではどこの本屋でも売っている最もポピュラーなランドマクナリー社の道路地図にさえ「Continental Divide (大陸分水嶺)」と名付けられた一本の線が、しっかりと書かれてある。


たしかに。言われてみれば学校教育で分水嶺について習った覚えもない。考えてみればぼくは比喩としての「分水嶺」しか知らない。「いまこそ勝利と敗北の分水嶺」とか。

なんで日本とアメリカで分水嶺に対する態度が異なるのか気になる。というか、逆に言えば分水嶺がどこなのかなんて決めなくても支障がない、ってことなのかな。

など、分水嶺についていろいろと考えさせられる。が、ぼくはまずもってとにかく巻頭のこの折り込みページにぐっときたわけですよ。

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なんなんでしょう、これ眺めてるだけで一日過ごせそうな感じ。ここで著者によって引かれている分水嶺は、日本海と太平洋とに別れて流れていく河川の分水界をつないだものだそうだ。総延長6000キロ!

ぱっと見てまず「おや?」と思うのは青森の大分水嶺が下北半島じゃなくて津軽半島なのか!っていう点だ。じつはこれには諸説あるそうだ。その諸説あっちゃう理由のひとつが「津軽海峡というのは、海上保安庁の海域区分によれば、太平洋にも日本海にも属しておらず、独立した海区となっているらしい」というもの!そうなのか!びっくり!

ではどうして津軽海峡側をとったのか、というその説明がすごい。

ところが海底地形図を見ると、あきらかに白神岬と龍飛崎とがつながっており


分水嶺決めるのに海底地形図!かっこいい!さらにびっくりしたのは、

(青函トンネルは)、海底面下も含めて大分水界のほぼ真下を通っている。その理由はお分かりのように。海底地形を十分に調査したうえでルートが決められたからである。


という文。銀座線みたいだな、青函トンネル!

そのほかにも「千歳空港は日本で最も海抜が低い分水界か」などわくわくする記述がたくさん。これについて著者がさらっと

実際には、大雨の日に滑走路の水がどちらに流れるかを観察しないとはっきりしたことは言えない。


などと言っていること。おもわず笑ってしまった。

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この本がすてきなのは、分水嶺についてというより、分水嶺を手がかりに道路や歴史、温泉や食べ物などをめぐる読み物になっている点。それでいて一流の「熱中人」ならではの正確を期するスタンスはきっちりと。感服だ。いちどお会いしてみたいです。萩原さんと一緒に。